久しぶりにSF読んだ

シャングリ・ラ

シャングリ・ラ

 池上永一は初めて読みました。超大作ですが、面白さに引っ張られて4日で読み終えました。舞台は未来の(百年後ぐらい?)東京。世界経済は二酸化炭素の排出量で動く炭素本位制になっており、国家の存亡はその削減にかかっていた。日本はそのために東京のほとんどを森林化し、都民を超巨大建造物「アトラス」に移民させようとしていた。しかし、実はそれは「選民」であり、「棄民」でしかなかった。地上に残された者は、熱帯雨林と化した土地で激しいスコールに襲われ、マラリアなどの病に苦しめられていた。その中に、武装して政府に反抗する者たちもいた。「メタル・エイジ」もそうした組織の一つだ。彼らは、20万の民が肩を寄せ合って暮らす城塞都市「ドゥオモ」を根城にしていた。その新しい城主であり、「メタル・エイジ」の総統でもある少女、國子が帰ってくるところから物語は始まる。
 その後の展開は実にめまぐるしく、見せ場の連続。登場人物も皆くせ者。「メデューサ」というプログラム一つで世界経済を牛耳ってしまう少女、絶大な権力を持ち自分に嘘をついた人間を惨死させる超能力を持つ幼い少女と、その子に仕えるエキセントリックな女医などなど。(こうしてみると女性上位な物語であり、アンファン・テリブルが活躍する物語でもあるなあ。草薙君もちょっと影薄いし。例外はモモコさんぐらいか。といってもニューハーフなんだから女性陣営?)でもやっぱり戦闘美少女國子のアクションシーンにホレボレ。(アニメにしたら凄いだろうな。というか連載されていたのが『ニュータイプ』なんだからその辺は意識されているのだろうが)SFとしても、大きい嘘と小さい嘘をからめて、現実の延長線上に虚構の世界を築く手際がとても素晴らしい。とにかくエンターテイメントに徹した面白い作品でした。
(あ、間違って自分のに星つけちゃった。わざとじゃないよ〜)