美しい夢を見る人(ハレの日は思い切り遊ぼう)

 いつもこの時期になると、思い出す劇場版アニメがある。「うる星やつら2・ビューティフルドリーマー」見たのは大学の時だ。今は巨匠となった押井守が監督として手がけた作品だ。これを見たのは大学生の時。面白いのは言うまでもない、仕掛けも監督らしい手の込んだひねりがきいていて、私の中では1・2を争う作品だ。一年に一度これを必ずしみじみ思い出すのは、自分が高校生の時、文化祭に積極的に参加してなかったという後悔の念が今でも残っているからなのだろう。
 主人公たちの高校は文化祭準備のまっただ中、公開日を間近に控え、夜も遅くまで学校内は準備を急ぐ生徒たちが、上を下へ、右往左往の真っ最中である。あたるのクラスでも内装が間に合わず、「今夜も泊まり込みか」とみんなぼやいている。そこへ、メインの展示物本物の戦車が運び込まれ、その中であたるとラムの大げんかが始まり、床が抜けて大騒動に、…。「またやりなおしかよ!」キレかかるクラスメートたち。そしてその日は終わり、翌日へと準備が持ち越される。一夜明けて、学校の中はまた昨日と同じような騒ぎ。ところがその中、奇妙なことに気付いた者がいた。この繰り返される騒ぎは、いったいいつから続き、いつおわるのか、ひょっとして、自分たちは同じ一日を何回も繰り返しているのではないのか?そこからたんなるコメディでなくなり、私好みの展開になっていくのだが、それはさておく。
 民俗学者柳田国男という人が、提唱した学説なのだが、農耕民族である日本人の生活は、「ハレ」と呼ばれるイベントと「ケ」と呼ばれる日常の営みが、きちんと区別され、それが一定のリズムで繰り返されることで生活を成り立たせているという。これを学校に当てはめれば、毎日同じ時間帯に決まった授業を繰り返す「ケ」が一年のほとんどを占めるが、その途中途中に「ハレ」がはさまれていないと、生徒も教員もおかしくなってしまうのだ。それが文化祭に代表される行事であり、普段のくすんだ生活でたまった余分なエネルギーを一気に発散する場になっているのだ。ただ、文化祭というのは本当に特別な魅力を持っていて、これがいつまでも終わらないで欲しい、という気持ちを感じたことのある人は少なくないと思う。それが見事に描かれているのが、「ビューティフルドリーマー」なのだ。
 あとは私の個人的な事情になるのだが、私の父親はとても自己中心的で、自分の言うことに対して、絶対の服従を強いる人間だ。私は高校生の時、「門限6時厳守」であり、文化祭があろうと関係なしに家に帰らねばならない。おかげで、クラスの発表準備に全く参加できずに3年間終わってしまった。だから今になっても、生徒が遅くまで残って準備しているのを見ると、「うらやましいなあ」と思ってしまうのだ。生徒によっては、自分の意志で準備に積極的に参加しないこともあるみたいだが、高校の文化祭、たったの3回、楽しまなかったら、一生後悔するよ。私みたいに。

うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー [DVD]

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