『進化論』読了
- 作者: 芝田勝茂
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/06
- メディア: 単行本
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小説だか何だかよくわからない題名だが、前から狙っていた本。(芝田勝茂は前に2冊読んでいるが、結構私好みだった)読み始めてすぐスイッチが入った。(私にとっての本の面白さとは、「脳」のどこかにある「スイッチ」が「ON」になり、「没入モード」に突入できて、しかもその状態が最後の最後まで続くことを意味する。)前に読んだものと比べるとハードなタッチのSFであり、人間という存在の根っこを考えさせられる点でもより深い内容となっており、特に高校生にオススメしたい。大人になってから読んだのでは遅〜い。
どんな話かというと、冒頭での主人公は、未来の荒廃した澁谷の街でゲリラ戦を行っている狙撃兵だ。敵は『かれら』と呼ばれるここではまだ正体のわからない存在。
ところが次の章で、場面は現在に戻っている。主人公、塩瀬祐介は「進化論」を学んでいる大学院生。将来は優秀な研究者になることを周囲からも嘱望されている。彼はある日、道ばたで布教活動をしていた「ヨハネ」と名乗る新興宗教の教祖から、突然「あなたはヨセフになる人だ」と告げられる。まったく訳がわからない話だが、その後それを裏付けるような衝撃的な出来事が勃発。祐介がアルバイトで家庭教師として教えている少女美紀が「私のお腹にいる子供のお父さんになって下さい」と言い出したのだ。祐介は以前からほのかな恋愛感情を抱いていたのだが、決してそれを告白も、実行もしていない。美紀はこれは「処女懐胎」であり、特別な子供が生まれることを予感し、その子を守ってくれるのは祐介しかいない、と固く信じていたのだ。それを簡単には受け入れられない祐介。
だが、祐介自身にもこの時異常な事態が起こりつつあった。それは恐ろしくリアルな夢。冒頭部分は祐介の夢であり、祐介が眠るたびにその続きがまるで現実のように展開し、その中で祐介と世界が置かれている立場が明らかになっていく。その夢の中では『かれら』と呼ばれる進化した人類をめぐって、日本国内に大規模な内戦が勃発、さらに世界をも巻き込んでいく。もし『かれら』が新人類だとすれば、現人類は「進化論」のセオリーでは滅び去っていくしかないからだ。
一方、現実世界では祐介は美紀のため「ヨセフ」を引き受ける決心をし、行動を起こすが、そこに巨大な障壁が立ちはだかる。
一体、夢は現実世界の未来像なのか?現実世界はその道をあゆまなければならないのか?そして、祐介と美紀の愛と運命は?
今の人類の行いは現実的に地球の、世界の人々の未来に暗い影を落としている。その解決方法が見えない今、私たちはそのことに目をつぶっていていいのだろうか?そんなことを考えさせてくれる作品です。どうか読んでみて下さい。