村上春樹海辺のカフカ』読了
ISBN:4103534133 海辺のカフカ〈上〉 ISBN:4103534141 海辺のカフカ〈下〉
個人的な好みを言わせてもらえば、現段階で私が一番好きな(というかいやでも作品世界に引っ張り込まれてしまう)作家。これと『ねじまき鳥クロニクル』はかなり長いので、時間のやりくりがつかなくて読みたくても読めなかった。でもやっと読めて良かった!最初から最後まで、自分の内側をひっつかまれてゆさぶられるような感じ。日常生活の中で心が酸素不足になっている最近、これだけグーッと刺激を与えられて、精神的にかなりフカツ化された気がする。
15歳、中学3年の少年が、自分を損なう「家」脱出を試みるところから物語は始まる。肉体的にも精神的にも自分を鍛え上げ、二度と帰らない決意で家を後にする少年は田村カフカと名乗り、四国へ向けて高速バスに乗る。一方、そのストーリーの間に、第二次大戦中に起きた、謎の集団意識喪失事件、猫の言葉を理解し、行方不明の猫を探す「中田さん」の話が絡み、この三つに果たして関連があるのか、読者にはわからないまま、ある謎めいた殺人が起こり・・・
カフカの15歳の心の中で渦巻く葛藤には、誰もが直面しうる、しかし死とすれすれの深刻さがある。それを共有できるかどうかで、この作品の価値判断は人によって真っ二つにわかれるだろう。もうちょっと軽くみれば、登場人物の魅力にも結構ハマれる。私のイチオシは、「大島さん」、二番目は「星野くん」と「中田さん」のコンビ。(最後は思わず泣かされてしまう)
時間と興味のある人は、是非読んでみて下さい。