ソルトブレッドの恐怖。もしくは耐震強度偽装。あるいは人生ゲームの呪縛。

 3年生の調理実習で余った作品を頂きました。クリームコロッケはおいしかったけど、一個だけ恐ろしいものが。スイートポテトを作ったつもりで、間違えて塩を入れてしまったというもの。実は私、最近考えられない体験をしました。南柏の新しくできた商業施設に入っているパン屋さんで、私の好きなシュガーブレッドを買って、翌朝の朝食に食べたのですが、何の疑問もなく一口、二口思いっきり食べたのですが、「何じゃこりゃ〜、しょっぱいよ!」残った部分も確かめたら、間違いなく上にかかっていたのは「塩」。すぐ、お店に電話した所、同様の苦情が既に来ているとのこと。後でお詫びに伺いますと平謝り。わざわざ家まで来て、6個ぐらいいろんなパンをくれました。しかし、私にとってこの経験はものすごいショック。プロの作ったものだから、何の疑いもなく口にしたものに、こんなことがあったらどうですか?精神的ショックと、塩分の取りすぎで半日ぐらい気持ち悪かった。
 でもね、こんなのまだちっちゃいよね。最近のマンションの耐震強度偽装、あれはどうですか。大きい建築会社が手がけ、一級建築士というエリートが設計し、しかも、検査機関がそれをチェックして、自治体が再確認して許可を出す。これだけ厳重にやっているんだから、買う方は絶対の信頼をしていたと思うよ。それが、いつ起こってもおかしくない地震で倒壊すると言われ、退去を命じられる。ソルトパンなら食べる前になめてみればすぐわかるけど、こんな複雑なもの、一般人には倒壊してからじゃなきゃわかりゃしないでしょう。しかも、業者は露見した後でもきちんと対応しないし、責任のなすり合いはしているし、一体私たちは何を信じて買うものを選択すればいいのですか。
 結局、企業というものはいかにお金をもうけるかが第一目的で、消費者の立場で考えるのは二の次、三の次。それが、資本主義の社会の本当の姿です。自由競争によって、消費者の利益になりますよ、なんて、まやかしに過ぎないのですよ。子供の頃、「人生ゲーム」ってやったことあるでしょ。これが結構盛り上がるんだけど、最終的にお金を沢山儲けた人が人生の勝利者であり、幸福を享受することができる。お金がなくなれば、貧乏農場で一生重労働をさせられる。つまり、「人生」とは「お金」によって全て測られ、それ以外の価値観は全て捨象されているわけです。「お金」さえあればそれが「幸福」。それを手に入れることができたものが「いい人生だった」という、偏った価値観を子供の頃から植え付けられてしまうわけですよ。そこには、「モラル」という要素は一切入っていない。
 資本主義社会=自由で豊かな社会、というドグマを世界に押しつけようとするのは何者なのか。それが、何も知らない消費者を不幸に突き落とし、良心的に仕事をしている企業を敗者としてつぶしていく。そして、国家はそれを是正しようとしない。むしろ、モラルのない企業から利益を提供されることで、政も官も甘い汁を吸っている。
 今世間は、公務員の待遇がよすぎるというマスコミの論調に踊らされているけど、本当の問題の解決は、この社会構造の根本を解決することしかない。スケープゴートにされている私たちは、今どんどん真綿で首を絞められるように負担が大きくなっています。年金も退職金も、もう老後の生活の当てになりません。しかし、そのなかで多くの教員がモラルと誇りを持って仕事に力を尽くしているか。それに対して、「金」をかき集めるだけの組織や人間がどれだけ幅をきかせているか。「セレブ」な人たちがどれだけ社会に貢献しているのですか。若い人たちがそんな生き方に憧れを抱くような社会が先行きどうなっていくのか。
 ああ、そういえば、宮島で鹿が大繁殖して、片っ端から紙を食べてしまうという自体になっているそうです。観光客がおみやげを買おうとしてお札を出すと、いきなりそれを奪い取って喰ってしまうそうです。なかでも、一万円札が一番の好物だとか。何だかね、それを見てすごく複雑な気持ちになりましたよ。