ネクロポリス 下 (朝日文庫)

ネクロポリス 下 (朝日文庫)

ネクロポリス 上 (朝日文庫)

ネクロポリス 上 (朝日文庫)

 恩田陸ネクロポリス』読了。
 舞台になっている「v.ファー」はヘンな島。古くからイギリスの統治下にあって、イギリス文化がベースになっているのに、途中から日本の文化が混ざり込んできている。そして何よりも、11月に行われる「ヒガン」という行事。普段は立ち入ることのできない「アナザー・ヒル」という聖地に出かけ、その年に亡くなった「死者」と会うのだ。果たしてそんなことがあり得るのか?と疑問に思いながら初めて参加した主人公ジュン(東大の院生・専攻文化人類学)が次々と起こる事件に巻き込まれていく。紛れ込んだ連続殺人犯、夫が次々と死んでいく「黒婦人」の謎、大鳥居に吊された死体、恐怖の犯人捜し「ガッチ」…これでもかというくらい伏線が引かれていき、(おいおいそろそろ収束しなくてもいいのか、というぐらい終盤まで引かれまくり)最後までノンストップで読みたくなる。
 始めは、「う〜ん、これはついていけないかも」と思って読んでいたのだが、だんだん引き込まれていって、最後の方は夢中になっていた。まず最初の関門は、ファンタジー苦手の私にとって、入り込みづらい世界だったこと。次に「v.ファー」の人々のノリの軽さに抵抗があったこと。登場人物のキャラクターがはっきりしないこと。など、いろいろあったのだが物語の展開が息つく暇もなく、どんどん疾走していくうちに、全部気にならなくなってくるから不思議だ。ファンタジーであり、ミステリーであり、ホラーでもあるという複雑な作品だが、そのすべての要素が巧妙に絡み合っていて、しかもわかりやすく読みやすい。娯楽作品としては文句のつけようがない面白さだ。いつものことだが、オススメです。