日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で

やっと読み終わった〜。(面白いのだが、まとまった時間がないと読めないタイプの本なので)内容は題名に集約されているのだが、まず言語を「普遍語」「国語」「現地語」に分類して、それらの関係と歴史的な変遷を分析している。そして現在は、「普遍語」としての「英語」が猛威をふるっていて、多くの「国語」が亡びつつある時代であると考え、その中に「日本語」も含まれていると警告している。と書くと、よくありがちな評論のように思えるが、全体の流れを支えている部分部分に興味を引かれる。たとえば、「話し言葉」と「書き言葉」は全く別のものであるとか、「二重言語者」とか、「叡智を求める人」は「普遍語の図書館」に入ろうとするとか、日本の古典文学の価値が認められたのは近代に入ってからであるとか、国語の教員としては思わずうなってしまう所が満載だ。また、インターネットの普及を視野に入れているのも新しい。ただ、最後の、解決法として、国語の授業時数を増やせという点には納得がいくが、教科書は使わないで、近代の文学をとにかく読ませろというのは個人的にはひっかかった。現代の文学は(確かに近代の文学と比べれば最近の文学は見劣りがするのだが)「読まれるべき言葉」にあらず、というのは言い過ぎのような気がする。(私は村上春樹が好きなんだよ〜)

不可能性の時代 (岩波新書)

不可能性の時代 (岩波新書)

教科書に載っていた「メディアの在り方」の筆者、大澤真幸による現代社会の深層を分析する評論。
(ちなみにこの人の評論はときどき大学入試の問題に使われたりする)
おおざっぱに言うと、筆者は戦後の日本を、「理想の時代」(1945〜70)「虚構の時代」(70〜95)「不可能性の時代」(95〜)に三区分する。それは現実の対極にあって、それを規定するものがそのようにうつりかわってきたからだと言う。そして現在は、「他者抜きの他者」を求める一方で、暴力的な「現実」に逃避することで閉塞感から抜け出そうとするという分裂した傾向が現れていると指摘している。そうした傾向から脱却するための指針を示そうとしている。
まあ、こう言うと小難しい話に聞こえるが、岩波新書にしてこんなに、サブカルチャーに話を持って行っていいのというくらい、おたくやアニメや「美少女ゲーム」まで持ち出して論を進めている異色な評論なのである。まあ、メインはオウム真理教酒鬼薔薇や連続幼女殺人事件などの分析なのだが、それだって随分センセーショナルな事件ばかりだ。しかも、普通の評論によくありがちな、同じことをくどくどと難解な言葉で繰り返すという展開ではなく、一本道で結論まで持って行くという明快な流れで書かれているので、あきることなく読み通すことができた。ただ、ちょっと他の人の論に(大塚英志とか、東浩紀とか)寄りかかりすぎてるかな、という感はあるが、本来学問とはそういうものなのか。
そういうわけで、おすすめです。
(取り上げられている作品)
浦沢直樹『20世紀少年』
大江健三郎『取り替え子』『憂い顔の童子』『さようなら、私の本よ!』
松本清張砂の器
水上勉飢餓海峡
森村誠一人間の証明
村上春樹羊をめぐる冒険』『1973年のピンボール
竹熊健太郎『私とハルマゲドン』
ダルデンヌ兄弟監督『ある子供』(映画)
山崎貴監督『ALWAYS三丁目の夕日』(映画)
メル・ギブソン監督『パッション』(映画)
新海誠監督『ほしのこえ』(アニメ)
パトリック・ジュースキント『香水――ある人殺しの物語』
桜坂洋All You Need Is Kill
ゲーム『AIR』
ゲーム『ひぐらしのなく頃に
舞城王太郎九十九十九

虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

虚構機関―年刊日本SF傑作選 (創元SF文庫)

32年ぶりの「年間日本SF傑作選」だそうだ。
編者は大森望日下三蔵

私も昔は結構SF読みだったけど、最近はイマジネーションが衰えているのでしょうか?最初の方、ちょっと居心地悪い感じがした。でも岸本佐知子のエッセイでちょっと笑えて、その後の「星新一トリビュート」シリーズで、ああ懐かしいなあとほっとして、萩尾先生でわぁと嬉しくなった。(でも個人的には「ゆれる世界」を推すんだけど)そのあとは普通で、最後でどーんと重苦しくなった。凄く才能がある人だと思うんだけど、題材が生々しすぎて……
日本のSF、本当に元気になったのか?
(でも貴志祐介新世界より』は凄いぞ!)

今日もまた流れゆく……

今日は病院を4軒回った……
(内科、精神科、ペインクリニック、歯科)
今聴いているのは、パール兄弟の『ベスト・レシピ』懐かしい……
今読んでいる本は『寄宿生テルレスの混乱』よくわからん……
最近見た映画
デトロイト・メタルシティー
面白そうだと思ったけど、今ひとつ。一番の盛り上がり所が走ってるだけなんて……
全体的なぬるさのせいで松雪泰子の怪演もやりすぎに見えてしまう……
おくりびと
いい映画だ。死について適度な距離を持って考えさせてくれる。
でも、峰岸徹本当に亡くなってしまうなんて……
「容疑者xの献身」
思ったより面白かった。ドラマとは雰囲気が違う。
老けてむさい役の堤真一、泣かせてくれる。
松雪泰子、薄幸そうな女性とてもお似合い。素敵でした。

そういえばいきなり変なトラックバックがいっぱいついている。
トラックバック一覧で削除しようとしてもできないよ。なんで?

そういえば月曜日は教育委員会が授業を見に来る。いやだな……

リハビリになってない

日記を再開しようと思って、リハビリに読んだアンソロジーや雑誌の作品名だけでも挙げてみたが全然本来の目的に近づかないよ。書こうと思って書けなかったことを箇条書きにでもしておきます。

  • 貴志祐介新世界より』スゴ過ぎる!私の読んだ小説ベストスリーに入る!
  • 崖の上のポニョ』面白い。あれは心理学的にいろいろ解釈できそう。
  • Y先生ゴメンなさい。パンを買っていて遅れてしまいました。
  • ハリー・ポッター最終巻も凄かった。泣きそうになった。巻を追うごとにパワーアップ!

雑誌・アンソロジー

「日本の童話名作選 現代篇」講談社文芸文庫(2007年12月)

  1. 別役実「淋しいおさかな」
  2. 野坂昭如「凧になったお母さん」
  3. 阪田寛夫「桃次郎」
  4. 舟崎克彦コジュケイ
  5. 山下明生「はんぶんちょうだい」
  6. 皿海達哉「花がらもようの雨がさ」
  7. 竹下文子「月売りの話」
  8. 舟崎靖子「ひろしのしょうばい」
  9. 灰谷健次郎「だれもしらない」
  10. 三木卓「ぽたぽた」
  11. 三田村信行「おとうさんの庭」
  12. 角野栄子「ひょうのぼんやりおやすみをとる」
  13. 那須正幹まぼろしの町」
  14. 柏葉幸子「仁王小路の鬼」
  15. 川島誠「電話がなっている」
  16. 矢玉四郎「半魚人まで一週間」
  17. 森忠明「少年時代の画集」
  18. 池澤夏樹「絵はがき屋さん」
  19. 内田麟太郎「くるぞくるぞ」
  20. 江國香織「草之丞の話」
  21. 末吉暁子「黒ばらさんと空からきた猫」
  22. 斉藤洋「氷の上のひなたぼっこ」
  23. 森山京「あしたもよかった」
  24. 岩瀬成子「金色の象」
  25. 岡田淳「ピータイルねこ」
  26. 村上春樹「ふわふわ」

私的ベスト3
1「少年時代の画集」、2「電話がなっている」、3「金色の象」

雑誌・アンソロジー

「asta*」2008年9月号(ポプラ社PR誌)

  1. 池上永一「テーゲーチャンプルー」
  2. 萩尾望都「夢見るビーズ物語」
  3. 中島京子「ハブテトル ハブテトラン」
  4. 小川糸「喋々喃々」
  5. 大崎善生「不完全な円」
  6. 西川美和「1983年のほたる」
  7. 小路幸也「Cow House」
  8. 山本幸久「幸福ダイナマイト」
  9. 五十嵐貴久ダッシュ!」
  10. 中島かずき「まつるひとびと ニッポン奇祭譚」
  11. 永井するみ「マノロラニクには早すぎる」